八戸工場大学文化祭 アーティスト作品

八戸工場大学文化祭の会場となった福年ファクトリー2階にはアーティストによる八戸の工場をモチーフにした作品が展示されました。

アーティストの田中一平さんによる「素材力の編集 -セメント-」

 

 

作品概要

 素材が持っている物理的特性・付随してくる意味性・与えられる美的感性をニュートラルに見つめ、どのような関係性が成り得るのか「素材」について再考します。

 

 今回の制作ではセメントを主に使用し、素材への想像を広げ、新たなイメージの切り口を探し出しています。八戸セメントから頂いた八戸産のセメントを用い、モルタル、コンクリートを生成し、通常の用途では行わない工程、実験を繰り返しました。配合・比率を変える、何かを加えてセメントの表情を変える、削る、焼く、冷やす…と、ある種の「おもいつき」で多くのサンプルを制作し、セメントの新しい表情を探し出す行為そのものを一連の制作としました。たかが「おもいつき」ですが、ふとしたおもいつきの中に、新しい発見のヒントや未来のヴィジョンが隠れていると考えています。

 

 展示している作品の大半は 10cm 四方の小作品になりますが、大型の作品も1点制作しています。鉄製の水槽にセメントが自動的に降り注ぎ、山の様な様相を自然に作り出します。セメントは水分を含むと化学反応を起こし、固まっていき、会期中にはセメント

の粉が自然の山の風景を作り出します。

 

 

 

 この作品は、定期的にセメントの粉が上部のバケツから下の水槽に落ちるようになっています。最初は水だけだった水槽に徐々にセメントの山が作られていきます。

最終日の様子はアーティストにも誰にもわかりません。

 

 

最終日には、このような形になりました。

セメントと鉄と水という基礎的な資材が作るアート作品を来場者は興味深く眺めていました。

 

 

田中一平さんによる、セメントを使ったさまざまな作品集。

セメントの配合比を変えたり、混和剤を変更することでさまざまな色や表情をつくります。

手前にあるコンクリート製のラジオは実際に使用することができ、会期中はラジオから音が流れていました。

 

 

無機質なコンクリートも配合比や混和剤を変えたりすることでさまざまな表情を見せることに気がつきます。

 

電球や缶コーヒーを埋め込んだユニークな作品も。

 

彫刻家の飯田竜太(八戸学院短期大学講師)による「浸透の形 - The form of osmosis - 」

 

作品概要

 八戸にはたくさんの工場や、工場によって作られたおもしろい景観があります。その工場を外側から見ることと合わせて内側からながめ直すことで、より身近に工場を感じられると考えました。

 

 工場の景観がまちの外側を作り、そこで働く人がその内側を作ります。地球から得られる様々な資源を、人の手を使い有効なものへと変化させています。いわば、まち全体が、「八戸」という工場のように支え合い助け合ってモノを作っています。

 

 

 今回はその景観だけでなく、内側から工場を見る事を表現した作品を考えました。紙には、手で切られた穴が少しずつ浸透しながら続いています。色々なものを別な角度から見ることで、つながりを感じられればと思っています。

 

 地元の三菱製紙八戸工場で製造された紙を使った作品は、見る角度により表情を変え、幾多にも重なり合った紙は地層のようにも見えます。

 

 重なりあい循環していく世界観の作品に来場者は吸い込まれていました。

美術家の佐貫巧(八戸学院短期大学幼児保育学科 美術専任講師)の「熔解 ̶ 円環するイメージ ̶」

作品概要

 八戸工場大学の講義で八戸製錬の話を聞き、熔錬工程に興味が湧き、制作したものです。

 八戸製錬では、焼結鉱やコークスという原料を使い、溶鉱炉で 1030℃という熱で酸化亜鉛にし鉛で急冷。鉛中に合金として溶け込ませることにより金属亜鉛を生み出しています。また、廃棄物は八戸臨海工場地帯の様々な工場でリサイクルされ無駄なく循環しています。

 

 『錬金術』という言葉を聞くと「賢者の石」が頭をよぎります。卑金属を金などの貴金属に変え、人間を不老不死にすることができるというもの。絵具やキャンバスは、何もしなければただの素材です。画家はそれを使い、絵を描くことで観る者に夢や希望を与えることが出来ます。何か共通項があるようにも思えます。

 

 

 何かを生み出すというのは、様々な素材を使い、様々な工程を経て、様々な人の手によって「かたち」になるということです。日々の生活で、見過ごしているものを目に見える大切なものとして存在させる方法をこれからも探していきたいと思っています。

工業の童話~パブりんとファクタロー~ Fairytales of Industry 高砂充希子

 私の父の工場がある桔梗野工業団地に、80m の工場タワーを設計したものです。

この敷地は世界的な産業の縮小と 3.11 東日本大震災の被害により、昭和 38 年工業団地建設当初の勢いを失いかけています。私の卒業設計では、人々と工場達の希望をこめた建築をつくりました。主な施設は、職業訓練場、商工会議所、そしてスケートリンクの3つの機能によって多種の人々を呼び込むことを考えました。工場型を積み重ねた 80m のタワーは、津波の避難所として、またこの地域における工業的モニュメント、ランドマークになることを期待します。

 

 同時に、この設計の原案は寓話的発想です。わたしがこの土地に行った時に、寒そうで寂しそうな二棟の建物に生命を感じました。その名も「パブりん」と「ファクタロー」。ふたりの幸せのために何か出来ないかと考えました。寓話的・私的な発想と建築的思考の葛藤から生まれた卒業設計です。

 

 この建物の絶対的な力強さに触れることで、八戸の人々に希望を抱き、力強く生きることを願います。

八戸の工場にインスピレーションを得てアーティストたちがそれぞれの表現で造った作品たち。いかがだったでしょうか。

 

八戸工場大学文化祭ではアーティスト作品の他に受講生たちが八戸の工場をモチーフにさまざまな作品を造り展示しました。

 

そちらの方はまた別の記事で紹介しますね。お楽しみに!